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since 2002.10.14

『ボクの彼女は発達障害』を読んで

 広汎性発達障害がある彼女「あお」さんと聴覚障害がある「くらげ」さんの日常を描いたエッセイ漫画です。

 

 はじめにこの本全体から感じたのは「あったかい雰囲気」です。
 別のアスペルガー症候群を扱ったエッセイを読んだ時、障害があるせいでこんなに私達は困ってる……という、ともすると非難するような書き方をしていてちょっと閉口したことがあるんですが、この本はまったくそうではありませんでした。
 もちろん定型発達の人(いわゆる「普通の人」)に比べれば色々と困難はありますが、それに対し二人で協力しながら試行錯誤して対応し、お互い仲良く付き合っているというのがとても良いなぁと思いました。


 漫画を担当された寺島ヒロさんがあとがきで「この本は発達障害を扱ってはいますが『他者との出会いと相互理解』という普遍的なテーマを持った本」(p.155)と述べているのがまた示唆深いものがあります。
 自分――これは個人だけにとどまらず自らが属する環境・社会も含む――と他者は別の存在であって、自らの常識は相手に通用しないかもしれないとまず気づき、お互いどう歩み寄っていくか考えていく。これは障害があるかないかという次元を超え、たとえばハラスメントの問題を考える時も含め、常に重要なテーマでしょう。
 そんな所にまで思いをはせつつ、かつこの本の本旨である発達障害についても、デート中にこんなことで困ったけどこうした!という色々な具体例から理解を深めることができました。あおさんのかわいさと、くらげさんの真摯な人柄が伝わってきて読後感がとても良いです。


 世の中がせわしなくなってくると、色々な場面でともすると少数派の存在がないがしろにされがちですが、多数派が常に正義ではないということを念頭に置きつつ、かといってお互いバトルしてもしょうがないので仲良くやっていきましょうよーという世の中に少しずつでもなることを願っています。それにはまず自分からか。