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since 2002.10.14

第4章 その他基礎知識

4-01. 純正調を目指して

 

 吹奏楽で和音を作る際には「純正調」が目標となります。純正調とは、澄み切ったきれいな和音を作るための微妙な調整をした音律のことです。ピアノなど鍵盤楽器は「平均律」というもので調整されていて、きれいな和音が作れません。微妙な音程の変化ができる管楽器なら、ぜひ純正調を目指したいものです。

 

 それでは純正調の作り方を見ていきます。和音の構成音には「1音」「5音」「3音」「7音」というものがあります。例えばドミソの和音ではドが1音、ソ が5音、ミが3音となります。あらかじめ和音の構成音を調べておき、合奏中に「この和音はベーが1音、エフが5音…」というふうに指示をし、それを各自の 楽譜に書き取らせます。その和音が「メイジャー」か「マイナー」かを区別しておくのも大事です。メイジャーは明るい和音、マイナーは暗い和音です。

 

 この1音・5音・3音は和音の中でこんな働きをします。

  • 1音:和音の土台となる音。一番しっかり吹く。
  • 5音:1音の次に大事な音。1音と対等に吹く。
  • 3音:1音と5音の上にのっかる感じで。とても気を使う。普通は低め、マイナーの時は高め。

 純正調にするためは、まず1音・5音は音程ぴったりでチューニングします。そして3音ですが、メイジャーなら「チューナーで-10くらい」、マイナーな ら「チューナーで+10くらい」に合わせます。そしてあとは耳で調節。全体の響きで音程が合ってないときの「うなり」がなくなるように、よく聴いて合わせます。

 

 なお、和音の練習の際には「ハーモニーディレクター(ハモデレ)」が役に立ちます。ハモデレは設定をすれば、純正調の和音を出すことができます。ハモデレで同じ和音を平均律と純正調で比べて聴かせ、うなりの違いを実感させるのもいい練習です。

 


4-02. 純正調ヘの指導

 

 ここでは、純正調をつくるための指導の方法を見ていきます。

 

 始めに曲中から、合わせたい和音を見つけます。曲中には一瞬で終わる音、長くのばす音など様々な音において和音が使われていますが、この曲中の音全部を 純正調にするための指導をしていたのでは時間がいくらあっても足りません。そこで純正調の指導をする和音を選びだします。「二分音符以上のばす和音」のような曲中で目立つ和音を「純正調の指導対象音」とします。

 次にその対象音はメイジャーなのかマイナーなのか、1音・5音・3音はどれかを確認します。

 

 そして、合奏中にその対象音において「ここでベ-を吹いている人は1音、デスは3音です。マイナーの和音なので3音の人は高めにお願いします」というように指示をして、楽譜に書き取らせます。

 そして実際に音を確認していきます。まず1音の人だけで音を出させて、1音グループの人の中で音程をそろえます。5音・3音も同様に。各グループで音程が合ったら、今度は1音→5音→3音と音を重ねていき、うねりが出ないかをチェックします。

 

 和音は確認していくときりがないものです。コンクール曲はじっくり和音合わせをしていって良いのですが、練習に時間がとれない曲の場合は、せめて最後ののばしの和音など重要な和音2~3個を合わせましょう。

 


4-03. 倍音とは

 

 例えば「ド」の音を出したとしましょう。そのとき、よく耳をすませば、「ド」の音と同時に「オクターブ上のド」「その上のソ」…と、色々な音が一緒に鳴っているのが分かりますか? これを「倍音」といいます。物理をやっている人ならこの理論がわかるでしょうか。

 

 倍音の響きが増えると、音が豊かになります。上級者になればなるほど、複数の周波数の音が混ざりあって倍音が増え、音の響きが良くなります。この倍音と いうものはチューナーでは測定できず、人間の「耳」を頼りにするしかありません。プロのCDを聴いたりして倍音が豊かな音の感覚を身に付けて、それを目指 しましょう。

 


4-04. 拍の概念 

 

 例えば、3拍のばすということは、4拍目の頭までのばすということです。意外と言われないと気付かないこの拍の概念は、しっかり頭の中に入れておいて下さい。

 


4-05. アインザッツなど

 

 アインザッツは音の出始めの瞬間をいいます。それに対し、リリースは音が消える瞬間のことです。練習の時「アインザッツをそろえよう」という意識は誰もが持っていますが、意外とリリースをそろえることを忘れがちです。アインザッツがそろったら、リリースもそろえましょう。

 

 また「アタック」とは音の立ち上がりのことをいいます。「アタックが弱い」というのは、全員のアインザッツがそろわず、音の出だしがあいまいになっていることです。

 

 縦の線は、メロディーの中の一つ一つの音のアインザッツを総称して使う言葉です。

 




4-06. ドイツ語と英語の「B」

 

 ドイツ語で「B」は「ベー」と読み、ピアノのシ♭を指します。しかし英語の「B」は「ビー」と読み、ピアノのシを指します(つまりドイツ語の「H(ハ -)」)。ここが紛らわしいところです。楽譜に「B」と書いてあっても、それがドイツ語なのか英語なのかを確認しておかないと、半音違う演奏になってしまうので注意が必要です。

 


4-07. タンギングの位置 

 

 「スラーのついていない所はタンギングをする(スラー内はタンギング無し)」という原則があります。初心者でテンポが速くてタンギングの位置がわからなくなってしまう場合は、とにかくテンポを落として練習するしかないです。タンギングをするくせ付けをしておきましょう。

 なお、トロンボーンはスライドの関係上、スラーでも軽いタンギングになります。

 


4-08. アクセント

 

 アーティキュレーションの一つにアクセントがあります。アクセントは、ただ大きく吹けばいいというものではありません。確かに大きく吹けば強調して聴こえますが、音量を変えるのではなく音色を変えるアクセントもあります。

 ここは音量のアクセントなのか、音色のアクセントなのか、もしくは両方なのかを曲の場面に応じて考えて下さい。

 


4-09. 理想の音を持とう

 

 楽器を練習するときは「理想の音」がないと練習の効果は半減します。「自分はこんな音で吹きたいんだ」というイメージがないと、良い音には近付けません。目的を意識しない練習ほど無意味なものはありませんので、注意しましょう。

 

 理想の音を作るのによい方法の一つとして、部員全員でコンクールを聴きに行くことがあります。また、近くで上手なバンドの演奏会があるなら、部員全員でぜひ聴きにいきたいものです。さらに、CDやDVDなどを活用する手もあります。

 

 理想の音は「自分のパートの音」と「バンド全体の音」の2つに分けられます。まず「自分のパートの音」ですが、自分のパートのソリストのCDを買って、自分の持っている楽器はこんな音がするんだというイメージを頭の中に入れて下さい。知名度の低い楽器のソロCDは見つけにくいものですが、がんばって探して下さい。

 次に「バンド全体の音」です。これは吹奏楽のプロの団体のCDや、コンクールの演奏などを探して下さい。

 


4-10. CDの入手方法

 

 吹奏楽のCDというものはなかなか手に入りません。東京など大都市の楽器屋にいけば種類も豊富にありますが、地方の人は大変です。最近はインターネットも普及して、ネット通販を利用するのも手です。

 

 奏者に、家に帰ってCDを聴けと言っても、なかなか難しいものがあります。そこで、部活としてCDを買って、みんなで聴くのもよいでしょう。練習時間の中に「鑑賞」の時間を設けて、良い音をみんなで聴いて「理想の音」を作りましょう。

 


4-11. 視覚情報の活用

 

 鑑賞の時、CDを聴くのもいいですが、CDだとどうしても聴覚情報のみとなってしまいます。DVD等も活用し、ぜひ視覚情報も鑑賞しましょう。

 

 例えばコンクール全国大会の映像を集めたDVDなどはお勧めです。実際にコンクールの映像を見せ、「自分達と同じ中学生/高校生がこんなに素晴らしい演奏をしている」 ことを生徒に分からせ、意欲を持たせることができます。また、指揮者の素晴らしいテクニックや、打楽器の奏法などが目で見てはっきりと分かります。 映像が部員に与える影響は大きいものです。そんなに高価なものではないので、ぜひ視覚情報を活用しましょう。

 


4-12. その他用語「あ行」

 ここでは、これまで紹介できなかった吹奏楽の用語をまとめてあります。

 

【アゴーギグ】テンポやリズムを微妙に変えて表情をつける速度法のこと。
【あたる】臨時記号のつけ忘れなどが原因で、半音や一音違う音が同時に出てしまうこと。「そこの音があたっている。誰かフラット落としてない?」などと使う。また、意図的に音をあてている曲もある。
【アパチュア】金管楽器やFl.を演奏するときに出来る、息の通る唇のすき間のこと。 

 

【アンサンブル】合奏の中で同じ動きをしている人とうまく合わせること。「メロディーのアンサンブルが合っていない」などと使う。

【アンプ】吹奏楽では、ハモデレやエレキベースを使うときに使用する。電源のON,OFFの際、必ず音量は「0」にして行う(「ボツッ!」という音が出ないように。守らないと壊れます)。

【アンブシュア】管楽器を吹くときの口の形。音が悪い時の原因になったりするが、変にアンブシュアを変えると逆効果になりかねないので注意。

 

【ヴィブラート】音を震わせ、色気をつける奏法。Fl.やSax.のソロのときなどに有効。[反]ビビラート:緊張して音が揺れてしまうこと。「ちりめんヴィブラート」もほぼ同義。

【歌う】のっぺらぼうに吹くのではなく、強弱を変化させたり、音型を工夫したりしてそのフレーズを歌い込むこと。「歌い方をそろえる」とは、その強弱や音型の変化のさせ方を全員で統一するということ。

 

【エキストラ】演奏会で臨時に呼んで一緒に演奏してもらう外部の人のこと。

【落ちる】合奏中、みんなが今どこを演奏しているか分からなくなって、音を出せなくなること。

【落とす】臨時記号を付けることができなかったとき使用。「シャープを落とした」などと使う。

 

【オプション】たまに楽譜にオプションとしてOb.など特殊楽器の楽譜が書いてあることがある。その楽器が無い場合演奏する。たいてい小符・影譜で書いてある。

【オブリガート】対旋律のこと。 

【音域】楽器で音が出せる範囲。練習により広がる。

 

【音価】音の価値。つまり音符の長さ。

【音楽の三要素】「メロディー」「リズム」「ハーモニー」の3つのこと。どれが欠けても西洋音楽は成り立たない。

 


4-13. その他用語「か行」

 

【ガイド】楽譜上で、他のパートの動きが書いてある小さな音符のこと。小符・影譜とも呼ばれる。意味は次の二種類。1.次の入りをわかりやすくする 2.そのパートがない場合代わりに演奏せよ(オプション)

【替え指】音程やフィンガリングの都合で使う通常の指使いとは違う指使い。

【顎(がく)関節症】Cl. やSax.等の人でまれに発症するもの。あごがおかしくなったらこの症状かも。過去のバンドジャーナルにこの症状についての連載があった。

 

【隠れ録音】演奏会に行って、演奏を隠れて録音すること。実演家の録音・録画権など著作隣接権に関わる行為なので好ましくない。特にコンクールでは厳重に禁止されている(CD等が発売されるので、そちらで楽しもう)。

【上手(かみて)】ステージで、客席から見て右のほう。左の方は下手(しもて)

【カンニングブレス】長いフレーズが一息で吹けないとき、2人以上の奏者がブレスをする位置を変えて、つながって聴こえるようにすること。「チェンジブレス」ともいう。


【聴く】合奏においては「バランスを考えて」という意味。「そこの伴奏はメロディーを聴いて」とは、伴奏の人はメロディーより大きくならないようにバランスに注意するということ。

【基礎打ち】打楽器における基礎練習。テンポキープの技術等が身につく。

【急・緩・急】速い→遅い→速いという、吹奏楽でおなじみの曲構成。中間部にはゆったりしたメロディー。

 

【休符】「音がない音符」としてとらえる。休符も音楽の重要な要素。

【クールダウン】練習終了時に唇の調子を整えて、次の練習に備えること。

【ゲネプロ】ゲネラル・プローベの略。本番直前の総合的なリハーサルのことで、演奏だけでなく演奏会のながれ(司会・照明など)もリハすること。

 

【原譜】コピー前の元の楽譜のこと。その団体で永久に保存されるので、大切に扱わねばならない。

【コンデンス・スコア】スコアを2~4段譜に整理したもの。M8のスコアがこれ。

 


4-14. その他用語「さ・た行」

 

【さらう】練習するに同義。

【残響】音が出終わっても残る響きのこと。「あのホールは残響が長い」などと使う。

【3出】全国大会に三年連続して出場すること。そうなると、翌年はコンクールへの参加ができず、招待演奏という形になる。

 

【JASRAC】一般社団法人日本音楽著作権協会。現在はweb上でも簡単に著作権関係の手続きができ、演奏会を開くときなどでお世話になる。
【循環呼吸】息を吸いながら同時に息を吐き出せる、夢のような技。ブレス無しでいつまでも吹いていられる。だができる人は数少ない。 

 

【初見】初めて見た楽譜をすぐ楽器で演奏すること。

【初見大会】新しい楽譜が配られてその場で初見で合奏をすることで、演奏技術の向上につながる。リズムを耳で聴いて覚えてしまう人はここでばれる。

【シンコペーション】裏拍から始まるリズムの形。 

 

【スイング】ジャズで出てくる、揺れたリズム。「タタタタ」を「ドゥーダドゥーダ」というノリで吹く。

【スケール】音階のこと。

 

【絶対音感】ある音を聴いて「これはGの音だ」などと音を直接判断する能力。[反]相対音感:例えばピアノでCの音を聴いて「これはCだ」と分かってから、違う音を聴いてその音を相対的に判断する能力。

【セント】半音の間を100に分割して、その一つを1セントという。つまり100セント=半音。チューナーを使うと自分の音が何セントずれているかがわかる。

 

【ダブルタンギング】「タカタカ」とタンギングすること。テンポが速くて「タタタタ」でついていけない時に使用。金管楽器やFl.で使用可能。使うときは「タ」と「カ」で音色が一致するように気をつける。[関]トリプルタンギング:「タカタ」or「タタカ」

【ダメ金】コンクールにおいて、金賞を受賞したが上の大会への代表に選ばれなかった団体を指す。あまり好ましい表現とはいえないが、よく使われている。

【トゥッティ】全部の楽器が音を出している状態。総奏。

 


4-15. その他用語「な~わ行」

 

【ハーモニーディレクター】通称ハモデレ。合奏時によく使用する、純正調が出せるなどいろいろ機能がついているキーボード。ハモデレには音が出るメトロノームがついているが、音が出るだけで視覚情報がないため、使用は慎重にしたい。

【走る】正しいテンポより速くなること。逆に、遅くなると「遅れる」という。

【パッセージ】あるフレーズ全体のこと。速い指使いの時に使うことが多い。

 

【フィンガリング】指使いのこと。特に木管で重要。
【ペダルトーン】金管楽器の理論上、一番低い音。基音。
【ベルアップ】金管楽器のベルを上に向けて演奏すること。主に輝かしい所で使用。

【ベルトーン】鐘が鳴っているように演奏すること。


【邦人作品】日本人が作った曲のこと。コンクール課題曲はこれが多い。
【ホール練習】コンクールなどの本番前に、ホールを貸し切って練習すること。音の響きのバランスや緊張感の練習になる。費用はかなりかかるが、効果絶大。

 

【松葉】楽譜上で、ダイナミクスが「<>」となっていることを指す。

【割れる】きたなく、乱暴な音になってしまうこと。金管は注意。例「音が割れている」